大判例

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大阪地方裁判所 平成元年(わ)1309号 判決

本籍

大阪市中央区道頓堀一丁目一〇番地

住居

大阪府堺市新金岡町四丁七番七二号

不動産仲介業

藤原一郎

昭和一五年八月六日生

右の者に対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官藤村輝子出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役一年二月及び罰金三五〇〇万円に処する。

右罰金を完納することができないときは、金一〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

この裁判が確定した日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、大阪市中央区宗右衛門町一番九号(旧南区長堀橋筋二丁目二〇番地)に事務所を置き、「南北商事」の屋号で不動産仲介業を営むものであるが、自己の所得税を免れようと企て

第一  昭和六〇年分の総合課税の実際総所得金額が一五八四万九八一〇円、分離課税の実際短期譲渡所得金額が一億一〇八七万七〇四七円(別紙(一)修正損益計算書参照)あったにもかかわらず、不動産仲介料収入の一部を除外し、あるいは土地及び建物の譲渡収入を圧縮するなどの行為により、その所得の一部を秘匿した上、同六一年三月一四日、大阪市中央区(旧南区)谷町七丁目五番二三号所在の所轄南税務署において、同税務署長に対し、右年分の総合課税の所得金額が八四三万九三〇一円、分離課税の短期譲渡所得金額が損失の三五二万二九五三円で、これに対する所得税額は三七万七七〇〇円である旨の内容虚偽の所得税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により、右年分の正規の所得税額八二三一万五〇〇円と右申告税額との差額八一九三万二八〇〇円(別紙(三)税額計算書参照)を免れ

第二  昭和六一年分の実際総所得金額が八七三六万四三九九円(別紙(二)修正損益計算書参照)あったにもかかわらず、不動産仲介料収入の一部を除外するなどの行為により、その所得の一部を秘匿した上、同六二年三月一三日、前記南税務署において、同税務署長に対し、右年分の総所得金額が一八五五万三〇九七円で、これに対する所得税額が五二五万四〇〇〇円である旨の内容虚偽の所得税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により、右年分の正規の所得税額四七六九万二六〇〇円と右申告額との差額四二四三万八六〇〇円(別紙(三)税額計算書参照)を免れ

たものである。

(証拠の標目)

判示全事実につき

一  被告人の当公判廷における供述

一  被告人の検察官に対する供述調書二通

一  被告人に対する収税官吏の質問てん末書一六通

一  鎌田幸雄(二通)、福地義堯、平石憲次、池田真理子、宮野博明、巣山康弘、西原勝、窪田孝治、川西良太郎、有田順子、愛川利枝、佐藤あや子、山下弘信こと金炳淳、今川博、藤原秀子、南英三、笹渕妙里及び白藤冨士子(二通)に対する収税官吏の各質問てん末書

一  収税官吏作成の査察官調査書一〇通(証拠番号8ないし17のもの)

一  検察事務官作成の各電話聴取書(二通)

判示第一の事実につき

一  収税官吏作成の査察官調査書四通(証拠番号18ないし21のもの)

一  収税官吏作成の脱税額計算書(証拠番号1のもの)

一  南税務署長作成の証明書(証拠番号3のもの)

判示第二の事実につき

一  西垣幸栄に対する収税官吏の質問てん末書

一  収税官吏作成の脱税額計算書(証拠番号2のもの)

一  南税務署長作成の証明書(証拠番号4のもの)

(法令の適用)

一  罰条 いずれも所得税法二三八条一項、二項

(懲役と罰金を併科)

二 併合罪処理 刑法四五条前段

懲役刑については同法四七条本文、一〇条(犯情の重い判示第一の罪の刑に加重)

罰金刑については同法四八条二項

三 労役場留置 同法一八条

四 刑の執行猶予 同法二五条一項(ただし、懲役刑のみ)

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 白井万久)

別紙(一)

修正損益計算書

(藤原一郎)

自 昭和60年1月1日

至 昭和60年12月31日

〈省略〉

〈省略〉

別紙(二)

修正損益計算書

(藤原一郎)

自 昭和61年1月1日

至 昭和61年12月31日

〈省略〉

〈省略〉

別紙(三)

税額計算書

藤原一郎

〈省略〉

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